麻布競馬場さんのツイート
昔、ウユニ塩湖に行ったんですよ。
高校のとき
「ウユニ塩湖行ったら人生変わった」
って、クラスの子が夏休み明け、興奮気味に言ってて、それで、バイト代こつこつ貯めて、どうにか辿り着いたウユニ塩湖は、
大きな水たまりみたいで、二分も経たずに飽きちゃったんです。
人生は、何も変わらないままです。
昔、ウユニ塩湖に行ったんですよ。高校のとき「ウユニ塩湖行ったら人生変わった」って、クラスの子が夏休み明け、興奮気味に言ってて、それで、バイト代こつこつ貯めて、どうにか辿り着いたウユニ塩湖は、大きな水たまりみたいで、二分も経たずに飽きちゃったんです。人生は、何も変わらないままです。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
fa-twitter関連ツイート
特に荒れてもない公立小中から特に頭も良くない公立高へ。美咲ちゃんとはそこで知り合いました。彼女はこのあたりの地主の娘でした。田舎の金持ちといえば医者か地主で、勉強ができないと跡を継げない前者と違って、彼女には生まれながらにして、そこそこ楽でそこそこ幸せな人生が約束されていました。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
でも少ししたら熱も冷めたらしく、彼女はもうウユニ塩湖の話はせず、松坂桃李のドラマの話ばかりする元の彼女に戻ったようでした。その熱が再発したのは大学受験直前期でした。「ウユニ塩湖で人生変わった」そんな景気のいい自己推薦書を、彼女は慶應SFCのAO入試に向けて書き始めたのです。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
それがウユニ塩湖のおかげだったのか、戦後のドサクサで大量に獲得したと噂されていた土地のおかげなのかは分かりませんが、何にせよ彼女の運命は、この街の他の人たちよりは明らかに「変わった」ようでした。私は地元の国立大に進んで、この退屈な田舎町みたいな平らな畦道をムーヴで走っていました。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
地元の友達がお金配りおじさんのRTばかりする中、美咲ちゃんのツイートだけが異質でした。「現役女子大生ミサキの全部見てやろう」YouTubeやnoteを横断した彼女の私生活の切り売りを見る限り、彼女はせっかく受かった大学にロクに通わず、お父さんのお金で海外旅行にばかり行っているようでした。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
次第に、彼女のツイートを見るのが辛くなってミュートして、でもひどく酔っ払った日、それが結局は彼女に対する嫉妬であると気付いて大泣きしてしまい、その場でウユニ塩湖ツアーをネット予約しました。彼女がそうであったように、私の人生もあの湖の光景によって変わるのではないかと期待したのです。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
地元に帰っても人生が変わる様子はなく、退屈から退屈へとムーヴを転がすだけの日々が戻ってきました。しかし私の人生は変わったと言えます。すがすがしい諦めというか、美咲ちゃんみたいな人を見て、空から降ってくる何かが私の人生を変えてくれるなんていう要らぬ期待を抱かないようになったのです。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
美咲ちゃんの日常も変わったようでした。「原体験に深く向き合った」と、伸び悩んだYouTubeを諦めてOTAなるものを起業しました。立派なnoteを書きました。その立派なnoteに書かれた明るい未来は、コロナで吹き飛びました。美咲ちゃんはまたYouTubeに戻ってきて、サウナ水着回みたいなのが増えました。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
彼女から久々に会おうと連絡が来て、駅前のスタバで待ち合わせしました。この街はスタバすらまずい気がすると彼女は言いました。彼女が着ているオーラリーはこの街で彼女だけが着ているような気がしたし、やわらかなシルエットのその服は、彼女にとっての防護服のようにも見えました。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
彼女はひっそりとインスタを立ち上げました。そこには意識の高い調達ストーリーも、シェフを家に呼んでのタワマンホームパーティーの話も流れてこなくて、彼女は庭に咲いたタンポポとか、スタバの新ドリンクの話ばかりをしていました。最近は親の紹介で地銀勤務の彼氏もできたらしいです。
— 麻布競馬場 (@63cities) April 16, 2022
私?変わりましたよ。自分のありのままを肯定してあげられるようになったんですよ。他人なんて羨ましくないし、這い上がろうとする人を、必死だなぁ、って笑えるんですよ。地価がじわじわと下がるこの街で、彼女がじわじわと破滅してゆくのを、汚い水たまりの中に立って、楽しく眺めているんですよ。
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fa-wikipedia-wウユニ塩原
ウユニ塩湖はボリビア南西のアンデス山脈にある世界最大の塩原です。この塩原は先史時代の湖が乾燥したもので、ほぼ 11,000 平方キロメートルにおよぶ砂漠のような白塩の大地、岩の形成、サボテンが生える島々の風景で知られています。この別世界のような光景は、中央にあるインカワシ島から眺めることができます。この独特な環境にはほとんど野生動物は見られませんが、多くのピンク フラミンゴが生息しています
出典:Wikipedia
fa-commentネット上のコメント
・人生変えたきゃいくらでも変えようがあるのにそれをしないのは変わるのが怖い、現状でもそこそこ満足してるってのが本音なんだろうね。出てくるご飯に飽きたなら自分で作ってみたらいい。仕事は辞めて新しく探してみたらいい。今住む場所が嫌なら引っ越せばいい。結局変わるかどうかは自分の意思しだい
・気学に祐気という概念がありまして、その人にとっての吉方位に旅行すると運気が上がるようです。
・風景見た程度で人生変わる人は、そもそもすでに満たされてると思うし そりゃそうだよなって思う
・素晴らしい、圧倒的文才。短編小説を読み終わったあとのような清涼感。この世界に完全に惹き込まれてしまった。今私はもう執筆活動をほとんどしていないけど、この方の文章は非常に憧れる。どこか切なくて、どこか儚くて、でもどこか強くて、でもどこか湿った情緒があって、それら全てが美しい。拍手!
・小説を読んでいるような読後感があった。 ウユニ塩湖は人生を変えることなく、自分を映す鏡だったのかも。
・幽霊より怖いホラー
・ウユニ塩湖に行っても人生変わんないってことがわかったことで 人生変わるのでは?w
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