荒川区議会議員・小坂英二氏『「コンス」は「朝鮮式のお辞儀」というデマ』(以下、4675文字)

小坂英二氏のツイート

「コンス」は「朝鮮式のお辞儀」というデマ

 小坂の議員としての活動を公私に渡り支え続けてくれている同志であり戦友である家内(天羽絢子:芸名=
写真)が、文頭のテーマでかなり前に書いた記事を紹介します。

 保守系の中で誤った話が未だにそれなりに流布されているのですが、接客業に関わる方が言われなく批判されたりしているのを見るにつけ、事実を伝えねばと思い共有します。
 少し長いですが、以下、お読みいただければ幸いです。

(前編)
 昨年辺りから、女性が腹部で両手を重ねる立礼を、「朝鮮式お辞儀のコンス」だとする風説を耳にするようになりました。

 結論から先に述べると、これは事実ではありません。

 我が国において、女性が手を重ねるこの所作がいつから「礼法」として広まったのか判然としませんが、恐らくは、戦後の女性の社会進出に伴ってであろうと思います。

 女性が店頭や企業の受付に立ち、「いらっしゃいませ」と客を迎える場面で、より美しく丁寧に見える作法が必要とされたのでしょう。

 韓国には、日系企業から従業員教育の一環としてもたらされました。

 今なお、アジア各国で日本のスーパー・百貨店等が開業する際には、日本の教育担当者が現地に飛んで接客態度を指導しています。

 中でも、お辞儀の仕方は重要項目と聞きます。

 つまり、韓流なる文化が我が国に上陸するずっと以前からこの立礼法は存在し、かつ、韓国には日本人が輸出したということです。

 では、「礼法」のルーツはどこにあるかと言えば、まずもって考えられるのは、既に何名かの方がご指摘になっているように、皇后陛下のお振る舞いです。

 美智子さまは丁度、小売・サービス業等の第三次産業に従事する女性が増加した高度成長期の1959年に、皇室に嫁がれました。

 ご婚約時代から、美智子さまのお召し物やご発言の一つ一つがブームになるなど大変な影響力がおありでした。

 そんな妃殿下のお振る舞いが、働く女性の立礼のお手本とされるようになったことは想像に難くありません。

 実際に、マナーや礼儀作法を教える場においては、「女性皇族の姿勢、お辞儀の仕方を見習うように」と言われることがあります。

 これに対して、「皇室と庶民は違うのだから、作法を真似る必要はない」と批判する人がいますが、文化・習俗は往々にして高きから低きに流れるものです。

 日本女性が皇后陛下の真似をすることに何の問題があるでしょうか。

 次に考えられるルーツは、座礼です。

 座礼の最敬礼では両手の人差し指の先を合わせ三角形を作るようにしますが、手を並べることに対する改まったイメージがいつしか手を重ねることにスライドした可能性があります。

 私はモデルとして様々なポーズを研究して来ましたが、そもそも、人間の手というのは、物を持つ、物にかけるという動作を伴わないと、所謂「手持ち無沙汰」の状態になりだらしがなく見えがちです。

 男性なら軽く握って体の横につければいいのですが、優美さを表現したい女性はそうは行きません。

 日常の中でとる、美しくエレガントで前後の動きを妨げない自然な所作・・・となると、自ずと手は前で軽く組むか重ねるかになります。

 重ねた手の位置はおへその下が最も美しいと言われています。

 それより下へ垂れると肩が落ち、背中が丸まって見えてしまいます。

 和装の場合はおはしょりの線に手を添わせると上品になります。

 まとめると、「手重ね式立礼」が韓国のお辞儀から来ているというのはこじつけの類いであり、多分に意識過剰です。

 ネットでこの風説を検索すると、コンパニオンのラインナップ写真を比較して微妙な差をあげつらったり、皇后陛下のお振る舞いを批判したりする記述がヒットします。

 韓国を嫌うあまり、類似性があると見るや分別なく貶め、あるいは正誤も確かめずに断罪するのはいかがなものかと思います。

(後編)
 前回の手重ね式立礼についての投稿に、コメント欄でいくつかの疑義が呈されましたので、それにお答えしたいと思います。

 まず最初に、前便と重複する事柄もありますが、私の基本的認識を述べます。

 礼法は服飾やライフスタイル、道徳観念などによって自ずと変わるものです。

 和服を日常的に着用し、畳敷きの部屋で過ごしていた時代と、洋装を主体とし、フローリングやカーペットの部屋で過ごすことが多くなった現代とでは、当然所作に違いが出て来ます。

 その上で、前便では手重ね式のルーツを探るとの試みをしました。

 無論、この種の文化・習俗の来歴には諸説あるもので、それ自体が専門家による研究対象になるほど奥深いテーマです。

 いつどこで誰が考案し、広めたものかという歴史的経緯を明らかにすることは難しく、私の推論によって展開している部分がいくつかあります。

 とは言え、諸々の歴史的事実から、除外できる説も出て来ます。

 それが、件の韓国を起源とする説です。

 その根拠となるのが、次の事例です。
A.
ご婚約時代から絶大なる影響力をお持ちであった現皇后陛下美智子さまのお振る舞い。
これについては多言を要さないでしょう。皇后陛下が公の席でおとりになるご姿勢、お手の位置を見れば、手重ね式によく似ていることがわかります。

B.
美智子さまがお輿入れし、皇太子妃におなりになった当時の我が国の産業構造の変化とそれに伴う働き手の変化。
美智子さまが嫁がれた1959年は高度成長期の入り口に当たります。
1950年頃から、農業等の第一次産業に従事する女性は減り、代わりに小売・サービス業等の第三次産業で働く女性が増加しました。

http://www5.cao.go.jp・・・/white・・・/h9/wp-pl97bun-1-1-2z.html

我が国の主力産業そのものが、第一次から第三次へシフトしたためです。
第三次産業に従事する人が増えれば、マナーや礼儀作法の統一化が必要になります。
折しも、カラーテレビ放送が開始され(1960年)、多くの人がよりリアルな情報を入手することが可能になり、テレビを通じて流れる皇太子妃殿下のお姿に国民が熱狂した時期でもありました。

C.
手重ね式立礼が遅くとも1929年には我が国で見られたこと。
1929年、我が国初のエレベーターガールが上野松坂屋に登場しました。
写真の中の彼女達は一様に手重ねの姿勢を取っています。手前から二番目の女性は両の手のひらを組み合わせるような所作です。
http://showanavi.jp/column/okujo/03/02.php
これが彼女達のアイディアによるものか、あるいは百貨店の統括マネージャーやカメラマンの指示によるものかは不明ですが、いずれにせよ、美の代名詞であったエレベーターガールが集団で手重ねをしているということは、当時からこの所作が接客時の姿勢として好ましく思われていたことの証でしょう。
また、興味深いことに、1921年に撮影された大阪府の小学生クラス写真では、椅子に腰かけた最前列の女児全員が手重ねをしています。
http://konjaku.com/report/kindai_fukusyoku.pdf#19
但し、この時代に手重ね式が今ほど広がり定着していたかと言えば、私は疑わしいと思います。
和装から洋装への変化、接客業に従事する女性の増加、テレビ等媒体の普及を経て初めて「女性の美しく丁寧な立礼」として記号化したと考えられます。
こちらの1971年の全日空の国際線チャーター便初就航の際の写真では、手重ねをしていないスチュワーデスもいますが、中央の男性3名は手重ねをしているのが面白いところです。
http://anahd.co.jp・・・/company/anapace/img_1964_03.jpg

D.
1979年のロッテ百貨店開業の際に、元三越百貨店勤務・玉屋常務の秋山英一氏が韓国人従業員にお辞儀の仕方を指導したこと。
藤井通彦氏著書の『秋山英一聞書 韓国流通を変えた男―ロッテ百貨店創成記』には、「客が声を掛けたら振り返るような韓国の既存百貨店の接客態度を変えなければと思っていた私は、日本流のお辞儀を導入することを決めました。〈中略〉練習では一列に並ばせて、一、二、三の掛け声で、お辞儀をさせます。客の目を見て頭を下げる。角度は四十五度、前で組んだ手は体とともに自然に下げる」と、秋山氏が手重ね式を初めて韓国に導入した際の様子が記されています。
http://blogimg.goo.ne.jp・・・/6708bd075bd6a4519f9e22a9940d・・・

E.
韓流文化が我が国に上陸したのは2003年以降であり、それ以前に写真やドラマ等を通じて韓国・朝鮮人の礼法が広く視認される機会はなかったこと。
『冬のソナタ』の放送は2003年の4月から9月にかけてということです。

F.
マナー・礼儀作法研修等で、「皇后陛下を始め、女性皇族の立ち方、お辞儀の仕方を見習うように」として手重ね式をレクチャーされること。
これは私自身が経験しました。

 以上が、私が「手重ね式立礼は韓国をルーツとしない」と結論づけ、当説を根拠のない風説であると断じた論拠になります。

 反対に、韓国起源説を裏付ける資料は、私が調べた限り出て来ませんでした。

 これについて、もしご存知の方がいらっしゃれば、ご教示下さい。

 ちなみにですが、韓国のお辞儀である공수(コンス、丁寧なお辞儀の意)は一般的に배꼽인사(ペコプインサ、おへその挨拶)と呼ばれ、重ねた両手をおへその辺りに当て、上体を45度から90度に折り曲げるスタイルをとるようです。

 また、男女でどちらの手を上にするかの違いがあります。
http://kpedia.jp/w/14285

 배꼽인사で画像検索をすると、人によって手を置く位置や上体の曲げ方に多少の違いがありますが、頭を下げながら腹部に手を押し付けるように当てている例が散見されます。

 謝意や敬意を表現したい程度を、押し付ける力の強さで 表現していると推察されます。

 これは、我が国の手重ね式と異なる点です。

 最敬礼に当たる절(チョル)を解説したページに手の重ね方が載っていますので、ご参考までに。
http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/TE/TE_JA_7_5.jsp・・・

 さて、最後になりましたが、寄せられたコメントからポイントを整理し、それに対する私の見解を述べます。

1.手重ね式は日本の伝統的礼法とは形が異なっており、肘を張ることはよしとされなかった。

2.手重ね式を韓国に日本人が伝えたとする根拠は何か。

3.手重ね式を美しいと思えない、好ましく思えない。
1については、我が国の伝統的礼法と手重ね式が異なるのは明らかであり、例えるなら、JPOPと雅楽を比較するようなものです。
 同じ音楽というカテゴリーですが、この二つは成り立ちからスケール(音階)、用いられ方に至るまで違いがあり、安易に同列視できるものではありません。

 よって、私はここでは手重ね式と伝統礼法を比較し、論じることはしていません。

 ですが、あえて言うならば、ビジネスシーンを始め、人と接する時のスタンダードな態度は、日本古来の流儀である「相手と目を合わせず身をかがめて謙譲の意を示す振る舞い」から「相手の目を見て胸を張る堂々とした振る舞い」へと変わって来ています。

 こうした点を考慮せず、伝統、伝統と言うのはなんだかなぁと思います。

 いつぞやの着物の話ではありませんが、人を一定の型にはめるのは無理がありますし、却って反発を招いて死文化に拍車をかけることになりかねません。

 伝統的礼法を知りたい人には丁寧に教えてあげる程度のことで収まらないものでしょうか。

2について。
上記Dの通りです。秋山氏の指導前は、韓国人には「家族や親戚には礼を尽くさねばならないが、他の人間に必要以上に親しげに振る舞わない儒教文化が背景にあった」(同書より)そうです。

3については、コメント欄にも書きましたが、「美しくない、嫌い」というのは個人の主観的次元の話です。
嫌いな人がいても不思議はありませんし、それ自体とやかく言うことではないでしょう。

 しかし、嫌いだからといって無根拠の風説を流していいわけではありません。

 手重ね式を美しいと感じて実行する人を貶めたり、他の所作を強要することにも問題があるでしょう。

 「人は人、自分は自分」と自他の境界線をしっかり引くことをお勧めします。

関連ツイート

小坂英二


小坂 英二は、日本の政治家。東京都荒川区議会議員。神奈川県横浜市戸塚区出身。
生年月日: 1972年11月5日
出典:Wikipedia

ネット上のコメント

全く賛同できませんね

長すぎ!読む気にならない・・・

あらら、かえって炎上しちゃってるやん😁

日本の礼儀作法を一から学んでください。

長すぎて読む気が失せました。(> <)ですが、コンスは伝統的な日本人の作法では無いと断言します。大作家先生に確認してみて下さいね。🖤

応援しようと思わなくなりました。 ごめんなさい。

長過ぎです。

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