【指導死問題】カンニング後に息子自殺… 親の胸中

大阪市の有名進学校「私立清風高校」で、男子生徒がカンニング発覚後に自死した問題。両親が「指導死」として学校側を提訴し、指導の適切性が争点となる裁判が進行中です。

ネット上では学校の指導に対する厳しい批判が相次ぐ一方で、「生徒指導の線引き」を求める声も少なくありません。この問題を通じて教育現場における「指導」の在り方が改めて問われています。

指導がもたらした悲劇

2021年12月、清風高校の男子生徒は期末試験でカンニングを指摘され、約4時間の叱責を受けました。その後、自宅謹慎や全教科0点、写経80巻など厳しい処分が科されました。男子生徒は自らを「卑怯者」と呼ぶよう強要されたとされ、遺書には「死ぬ恐怖よりも、周りから卑怯者と思われることが怖い」と記されていました。

両親は学校の指導を「人格否定」として批判し、裁判で「指導死」だったかどうかを争っています。一方、学校側は「同様の指導で自死に至るケースはなかった」とし、全面的に争う姿勢です。

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教育現場で繰り返される問題

男子生徒の事例だけでなく、過去には兵庫県で同様の問題が発生しています。指導を受けた生徒が精神的に追い詰められ、自ら命を絶つケースが相次ぎ、遺族からの指摘や訴訟が続いています。

専門家によると、1989年以降に確認されている「指導死」とみられるケースは100件以上に上ります。これらの事例の多くは、指導の過程で「人格否定」と受け取れるような叱責や処罰が行われたことが原因とされています。

文科省は2022年に生徒指導の手引きを改訂し、「不適切な指導が自殺のきっかけになる場合がある」と初めて明記しました。しかし、現場に強制力がないため、指導の在り方を変えるには法的な整備が求められるとの指摘もあります。

教育現場に求められる「指導」の再定義

今回の問題で浮き彫りになったのは、教育現場における指導のバランスの難しさです。カンニングは明らかに不正行為ですが、それを指摘する過程で「人格否定」と受け取られる表現が用いられたことで、命に関わる悲劇が生まれました。

教育現場では「指導権」が法律で認められていますが、その行使には慎重さと配慮が必要です。特に、叱責や処罰が「過剰」となると、生徒の精神的負担が限界を超える可能性があります。「指導」と「罰」の線引きを曖昧にしてはいけません。

また、教師が生徒一人ひとりの状況を適切に把握し、個別に対応するスキルも必要です。そのためには、教師自身の研修やサポート体制の充実が急務です。

男子生徒の両親が裁判を通じて訴えているのは、同じ悲劇を繰り返さないための「指導の在り方」の見直しです。裁判がどのような結論を迎えるにせよ、この問題は教育現場全体が抱える課題として広く議論されるべきです。

指導が生徒にどのような影響を与えるのか、教師一人ひとりが深く考え、より良い教育環境を作り上げる努力が求められています。

(文=Share News Japan編集部)


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